負け犬プログラマーの歩み

負け組だった人間が今一度PGとして人生の飛躍を模索するも加齢と共に閉ざされる未来に直面しているブログ。

フルリモートワークは都市伝説ではなかった

諸事情が有ってまだ請けるかどうか決めてないのだが、フルリモート(在宅)でWeb開発のお仕事を頂いた。給与も前と同じぐらい。要は、仕事場に来なくていいから自宅からsshなりで繋いで仕事してくれというもの。「嬉しい」とか「誇らしい」とか以前に、そもそも「まともな給料を貰える在宅の仕事」が存在したことに驚愕している。

給与を無視すれば「在宅の仕事」を探すこと自体は難しくない。もう具体名は出さないが、たとえばあれとかは基本はフルリモートの募集だ。でもあそこは俺の相場感だと1/100ぐらいなので月収8万どころか8000円ぐらいだ。本業として生計を立てるどころか、副業としてもアウトだ。

海外だとフルリモートワークと言うのは珍しくないというか、ヤフーなんかは女社長が「やっぱ出勤しろ」と怒っているのは話題になっているが、日本で、それも外部委託の立場の人間にまさか「在宅でいいよ」と言ってくれる神企業があるとは露知らず。

では、「常駐」と比べて「在宅」の何が素晴らしいのだろうか。

税金が安くなる

開業届を出したフリーランスが自宅で作業する場合、家賃と光熱費、通信費の一部を経費として確定申告できる。割合については作業スペース基準とか色々とあるらしいが、とりあえず3割程度までなら税務署は指摘してこないらしい。また、私物PCを新しく購入したり、パーツを換装した場合もそれを仕事に用いるのであれば一部を経費として計上できる。

そうして計上した経費の4割近く(所得税23%・地方税10%・事業税5%)の税金の支払いが軽くなる。

労働時間が減る

常駐エンジニアには「無駄な時間」も「暇な時間」も多い。IT土方というのは畢竟するに上の人間から仕様が降りてこない限りはやる仕事がないのだ。職場に朝10時から夜19時まで常駐していても実働時間は4時間に満たない日とか、時には完全に仕事がなくてなんとか1日時間を潰して定時になったら即上がる日とか普通にある。

でも常駐契約というのは時給もしくはSES契約で、成果でなく時間で管理されているので、月の最低稼働時間(たとえば140h)を下回ると減給される。また日本には一旦会社に出勤した以上「仕事がないので帰ります」的なことはできないという同調圧力がある。結果、基本的にみんな毎日出勤して定時以降に帰っているのだ。

ところが在宅であれば「請負」で仕事をやれる。仕事をさっさと終わらせればあとは完全に自由だ。

他人の耳目を気にしなくていい

他の業界ほどではないかもしれないが、IT業界も意外にビジネスマナーや身だしなみを指摘する向きがある。

というか、レベルの低い会社の共通項の一つには「ビジネスマナーにうるさい」がある。こういう会社は服装についても「男性はスーツ着用」など取り決めを設けている傾向がある。そうなる背景として、「思考が硬直的」「形式主義」という社風の会社は、IT業界においては必然的に技術力が身につかず、根性論や精神論に逃げないといけないからだ。

また、彼らはエンジニアを「専門家」としては採用しておらず、使い捨ての土方としか思っていない。任せる仕事のレベルも低いため誰がやっても一定の成果は出せる。よって技能面で差が出ない以上、ビジネスマナーや精神論の部分で人を差別化するしかないのだ。

もちろん、どんなに技術力があっても人格とコミュニケーション力が重要だし、最低限のビジネスマナーや身だしなみは備えていて然りだ。ただ、酷い会社だと、自席で食事をしたとか、はたまた自席があるフロアでなく、その上の会議室があるフロアのトイレを利用したとか難癖が上司経由で俺のもとに伝わってくる(特にトイレについては未だに何が悪いのか理解できない。俺の入館証はどちらのフロアにも入れたし、会議などで普通に利用していた)。

在宅であればこんな指摘は一切請けることはないし、むかつく上司や同僚に悪態ついていてもノープロブレムだ。

住む場所を選ばない

職場と自宅が近いに越したことはない。俺はかつて通勤通学に片道2時間要していて東京まで通っていたが、それが自分にとってどんなにストレスになっているか、ひいては自分の人生のどれだけの無駄になっているかに気づいてから、東京23区に引っ越した。以来、電車は嫌いなので自転車で15分以内に職場があることを常に理想としている。

ただ、東京と言っても、IT業界だと案件の50%ぐらいは渋谷か新宿の周辺だ。しかし、俺は渋谷と新宿と池袋がとにかく嫌いなので(「ヤングの街ですよね」とかでなく単純に嫌い。秋葉原も嫌い)、その周辺に住むことはできない。だから23区在住なのに、案件を勤務地フィルターで濾過すると選択肢が一気に減るのが辛い。

ところが在宅なら何処に職場があろうがもう気にすることはないし、そもそも自分が何処に住んでようがお構いなしだ。北海道でもいいし沖縄でもいい。離島とか限界集落でも光ファイバーさえ通っていればいいし、それこそ海外でもOKだ。

都会に疲れて地方移住に憧れる人間は少なくないが、結局は雇用の少なさと給与の問題で挫折する(それ以外にも田舎暮らしには数々の困難があるらしいが、それに直面する以前に諦めないといけない)。その結果が今の東京一極集中であるが、その流れに一石を投じる存在となれるがリモートワークではないか。

仕事を掛け持ちできる

在宅での業務は常駐とは異なり本当の意味での「請負」なので、仕事が早ければ直ぐに納品して直ぐに終わる。移動時間や休憩時間から仕様の策定待ちなど常駐での無駄な時間を省いた在宅エンジニアの実労働時間は、常駐の半分以下になってもおかしくはない。

この場合、常駐とは違い物理的に拘束されていないので、空いた時間を別の在宅の仕事を請けるという選択肢も出てくる。収入面では2000万とは行かずとも、それなりの金額が稼げることになる。


・・・とまあ、やってもないのに在宅の良いところを書いてみたが、結局のところ、俺は諸事情を鑑みてこの仕事は辞退して、常駐ながらも業務内容に強く惹かれている仕事を選ぶ予定である。拘束時間も長くなるし手取りは半分程度になってしまうが、エンジニアとしてはやはり「働いて楽しい」「自分が成長できる」というのを一番に考えるべきだからだ。恐らく後悔するかもしれないし、決断には相当慎重になるべきだが、こういうときに相談できる人もいない。

あと「そもそも在宅で仕事をするってそこまで良いことなのか?」という懸念がある。むしろ、ゲームやインターネットなどの娯楽が無かった時代ですら、漫画家がファミレスや喫茶店でネームを描いたり、作家がホテルに缶詰にされていたことの意味を考えれば、自宅で仕事するってそこまで生産性は高くないんじゃないかとも思えるのだが。


いずれにしろ噂で聞くばかりで一向に募集のない「完全在宅勤務」というのはガチだった。フリーランスのエンジニアという微妙なキャリアを選んだのであれば、その数少ない強みを最大限に活かせる働き方として在宅には大きな可能性を感じている。